常楽さんの健康ブログ

健康について考えるブログです。

動物性たんぱく質の摂取量の善悪は年代によって異なる

 食の欧米化が癌とくに大腸がんの増加に影響を与えていることはすでに、多くの研究からも分かっている。そうした中で南カリフォルニア大学モーガン・レビンらの研究グループから興味深い研究が発表された。それは肉などの動物性たんぱく質の摂取量と死亡リスクの関係が年代で全く異なるというものだ。

 確かに40代‐50代の中高年世代では肉などの動物性たんぱく質の摂取が癌のリスクを上げて死亡リスクも高めるが、このリスクは65歳を境に逆転するという。つまり、65歳以上の高齢者になると、むしろ動物性たんぱく質を摂取することが癌のリスクを下げ総体的に死亡リスクを下げることにつながるようだ。

 人間の「からだ」とは誠に摩訶不思議なものだ。これだけ科学が発達しても人は人の「からだ」のことをどれだけ分かっているだろう。私たちの体は60兆の細胞からなっているという。そして、この世に生を受けてから命を終えるまで、ホルモンなどの内分泌系や交感神経・副交感神経などの神経系が休みなく働いているが、やがて年とともに代謝速度も遅くなってくる。こうした年とともに変わってくる体内の微妙な変化と動物性たんぱく質の摂取量そして死亡リスクは複雑に関係しているのだろうか。

人はなぜ年取ると時間の経過を早く感じるようになるのか

私は太極拳をやっているので高齢者の皆さんと話をする機会が良くある。そのような時ほぼ10人中10人の人がうなずくことが「時間の経過を早く感じる」ということだ。

それでは、なぜ年を取ると時間の経過を早く感じるようになるのだろうか。フランスの科学者アレキシス・カレルが「人間この未知なるもの」という本の中で以下のように大河の流れの例えを使って説明している。

“大河の流れに沿って歩いているとイメージしてみよう。午前中はまだ元気があり足取りも軽く歩いているため大河の流れが遅いと感じる。お昼頃には少し足取りも遅くなり大河の流れと同じくらいとなる。そして夕方になると疲れも出て足取りは遅くなり、大河の流れの方が速くなってくる。”

これは「午前中」が少年期、「お昼」が青年期、「夕方」が中高年期の例えとなっている。つまり、少年時代は成長著しいため私たちの体内では活発に代謝がなされているおり時間の流れが遅いと感じるが、年とともに年々代謝が遅くなってくるため、逆に大河の流れは一定であるにもかかわらず、私たちは相対的に時間の経過を早く感じるようになってしまうようだ。

子供の時と時間の経過の早さに変わりはないが、私たちは日々年々時が瞬く間に過ぎて行ってしまうと感じるのは生理的に止められないようだ。したがって、私は「今この時」を大切にすることが重要だと思っている。

運動と脳の働き

数年前に『脳を鍛えるには運動しかない!』(著)という本が出版され話題となった。著者はハーバード大学のジョン・レイティ教授で、日本に講演に来られた際に私も少しお話しする機会があったが非常に話しやすい先生であった。 この本の中で運動することは脳を育ててよい状態に保つことになるのだとして、シカゴのある高校で行われた事例を紹介している。そのシカゴの高校では「0時限体育」と称して、朝の1時限の授業の始まる前に校内のトラックをややきつめの速さで4周回ることを始めたそうですが、その結果生徒の健康が向上しただけでなく、成績の著しい向上も見られたというものだ。 運動すれば心臓の鼓動が早まることで脳の血流も増えることから、脳由来神経栄養因子と言われるBDNFが増えることは近年の研究で分かっている。BDNFは脳の神経細胞の成長を促し、記憶や学習に影響を与えると言われているので、こうした朝練が生徒の成績の向上に良い影響を与えることは十分考えられることではないかと思う。

この本の影響かどうかわからないが、日本の小学校でも朝登校すると生徒が校内のトラックを走ることを進めている学校もあるようだ。しかし、最近はスマホや携帯ゲーム機の普及で子供たちの運動量は減少しているのが現状のようだ。 実際、公園などに遊びに来ている子供たちも公園の片隅で数人集まってスマホなどでゲームに夢中になっている光景をよく見かける。せっかく公園に来ているのだから、走り回って遊んでほしいと思うのだが。。。

老化について

昔、不老長寿の薬を求めて家来に徒労の旅をさせた中国の皇帝がいたが、朗報が彼のもとに届くこともなく死を迎えた、と伝えられている。そして現代でもこの命題は変わりなく、人は誰でも例外なく老いる。では、なぜ人は老いるのか、と言う疑問に対しては現代科学の粋をもってしてもまだ完全には解明されていない。 

そんな中で最近大変興味のある研究が発表された。アフリカのモザンビークジンバブエに雨季の間に出来る水たまりに生息するカダヤシ類の淡水魚がいる。この魚は雨季が始まると孵化して3週間ぐらいで産卵できるまでになり、2-3か月で死を迎えるという超短命の生き物である。世界の科学者たちが注目したのはこの淡水魚を実験室で観測すれは短期間で生命誕生から死までの過程を観察できるということだそうである。そして、2-3か月を迎えると鱗の色が輝きを失い、体のあちこちにがん細胞が見られるようになるそうだ。

現在では長寿遺伝子といわれるサーチュインとか長寿ホルモンといわれるIGF-1などの研究が進められているが、不老長寿を願う気持ちは中国の皇帝だけでなく、人間の尽きない課題かもしれない。

人間の「脳力」の凄さ

 先日、新宿末廣亭で寄席を楽しんできた。沢山の芸人さんが多彩な演芸やお笑いを披露してくれたのであっという間に時間が過ぎたが、私が今回の演芸の中で特に驚いたのは紙切り芸人の技であった。舞台で体を揺らしながら手さばき鮮やかに紙を切っていくのだが、出来上がったものは信じられないほどの細やかさで見事なものであった。

 事前に何回も練習していたとしてもそんなに容易ではない芸と思われるが、今回はお題を会場から頂いたものを即興でやったことが先ず驚きである。さらに紙を切っている間、無言で紙切りに集中しているのではないのだ。紙切りとは関係のない話をして観客を笑わしているのである。さらに、紙を切っている間は体を前後に揺らしながらリズムをとっているのである。

 この技のすごさは3つの全く関係のないことを同時進行で行っているのである。私たちは頻繁に日常生活の中で無意識に2つのことは同時に行っている。例えば、車を運転しながら同席の人と会話をしている。あまりにも当たり前に行っているので意識しないのが普通だが、考えてみれば脳は運転するという行為と同席の人との運転作業とは全く関係のない会話を楽しむという行為を同時に行っているのだ。これだけでも、すごいことを脳は行っていることに驚いてしまうが、紙切り芸人は3つの別々な高度の作業を同時進行で行っていることに舌を巻かざるを得ない。こんなことはどんなに科学技術が発達してもロボットには不可能だろう。

 確信出来ることは、このような芸人の方たちは決して認知症などにはならないだろうと言うことだ。認知症予防には2つのことを同時にやる(ダブルタスク)ことが良いとされている。だからウォーキングしながら計算(例えば100から7の引き算を続ける)することは良く知られているが、今回の紙切り芸人の技は超超高度な計算をやっているのと同じと言えるだろう。

運動とがんの関係

「運動を錠剤にして販売することが出来れば、世界で最も売れる薬になるだろう」と言われるくらい、運動が健康に良いことは広く知られております。適度の運動を定期的に継続することで、肥満などによるメタボ予防、足腰などの運動器のロコモ予防、心肺機能の強化、高血圧予防さらにはストレス解消などの精神的効果など多くの健康効果が期待されております。さらに運動は一部のがん予防にも効果があることが近年の研究から分かっております。現在までの研究では運動することで予防効果があるとされているのは「大腸がん」と「乳がん」です。「大腸がん」も「乳がん」も近年顕著に患者数が増えている「がん」ですが、この2つのがんについてはすでに多くの研究から強いエビデンスがあると言えます。

運動は残念ながら錠剤にして飲むほど簡単ではありませんが、日常生活の中で適度の運動を継続することは自分の人生を意義のあるものに出来る方法の一つではないでしょうか。

健康の維持には自分がコントロールできる事とできない事があることを知ることが大切

自分の健康に関心のない人はいないでしょう。健康を維持するためには自分がコントロールできる事とできない事があることをはっきりと認識することが大切です。

それでは、自分がコントロールできない事とは何でしょうか。まず第1に年齢です。どんなに健康に自信のある人でも確実に体力は衰えて行きます。年齢は努力の如何に関係なく自分では若返ることも先延ばしすることも不可能です。第2は親から受け継いだ遺伝子です。私たちの体には連綿と遠い先祖から受け継がれてきた2万数千個といわれる遺伝子があります。これらの遺伝子の中には特定の病に罹りやすい遺伝子が含まれている可能性があるかもしれません。しかし、これも自分では全くコントロールできません。そして、最後が不慮の事故です。

つぎに、健康維持のために自分がコントロールできる事とは何でしょうか。これは何といっても生活習慣です。バランスの摂れた食事、適度の運動そして睡眠という健康維持の3要素のほかに禁煙・適度の飲酒などに注意を払うなどです。これらはすべて自分でコントロールできる事といえます。

欧州の格言に『遺伝子が弾丸を込め、生活習慣が引き金を引く』というのがあります。例え親から受け継いだ自分の遺伝子の中に病気を発症する可能性のある遺伝子を持っていたとしても(遺伝子が弾丸を込め)、正しい生活習慣を守っておれば発病(生活習慣が引き金を引く)しないと言うことを、この格言は言っているのだと思います。さらに、毎日を前向きにご機嫌な気持ちを持つことも長寿と強い相関関係にあることも近年の論文から明らかになっております。

さあ今日も「ご機嫌に、毎朝スッキリ、適度の運動」で過ごしましょう。