常楽さんの健康ブログ

健康について考えるブログです。

「新型の頭脳流出?」-スマホ依存症は認知機能の低下を招くー

「頭脳流出:スマホを傍に置いておくだけで認知機能を低下させる。」と題する論文(The Consumer in a Connected World誌8月号)が発表された。 この論文によると、日頃からスマホを使用している520名の大学生の男女を対象とした研究で対象者を3群に分けて、第1群はスマホを常に机の上に置いた状態にし、第2群はスマホをカバンの中に入れた状態であるがカバンは部屋に持ち込む状態とし、そして第3群はスマホが入ったカバンを部屋に持ち込まずに受付に預けてから部屋に入る状態にして、全員の認知機能テストを行ったところ、認知機能の数値が一番高かったのはカバンを部屋に持ち込まなかった第3群で、一番数値が低かったのはスマホを机の上に置いた第1群であったと報告されている。

この一つの研究結果だけで決定的なことは言えないが、この論文は非常に重大なことを示唆している。 私はこの欄で過去にも「利便性の追求とその高価な代償」について述べたが、現代人は車やエレベーター・エスカレーターの普及が運動不足による生活習慣病の蔓延という高価な代償を支払うことになっている。

同様に、現代の若者は常にスマホに心を奪われている現実が見られる。スマホがあればどんな情報も即座に得られ、且つ常にスマホを通じて世の中と繋がっているという安心感があるようだ。しかし、自分の頭で思考を巡らせることもなくなれば、これはまさに人間の頭脳がスマホに流出している状態といえる。

この論文が示唆しているように、将来スマホという利便性の高い怪物に依存するあまり、認知症の蔓延という高い代償を支払うことにならないのか、気になるところだ。

健康と病気は同じ連続体上にある②

去る3月のこの欄で表題①について書いた。これはアメリカの社会学者アーロン・アントノフスキーの理論であるが、英語オリジナルの表現は「健康」が”Ease”で、「病気」が”Dis-ease”という表現で説明されている。実は、この方が「同じ連続体上にある」という説明が分かりやすい。つまり、”Ease”とは体に痛みや苦しみがなく、なにも異常がない安らかな状態を示しており、安らかな状態ではないという意味で”Dis-ease”がしようされている。

そして私たちは、日々安らかな状態から安らかな状態ではないまでの同一線上のどこかに位置しているという事の様だ。ある時はすこぶる元気に感じる時もあれば、朝から何となくだるく重苦しい時もあることは誰でも経験していることである。

そして、出来るだけ安らかな状態に近づける唯一の方法は日頃の生活習慣ということになる。(ちなみに、病気の英語はDiseaseだが、これは安らかな状態ではないことを意味している。)

 

「適度な運動」と「ご機嫌な気持ち」が健康維持には大切

欧州の格言に「遺伝子が弾丸を込め、生活習慣が引き金を引く」というのがある。これは、「例え持って生まれた遺伝子の中に悪質な病気を引き起こす可能性のある遺伝子が含まれていたとしても、正しい生活習慣を維持しておれば発病はしない」という事を言っている。

正しい生活習慣とは、一般的に①バランスの摂れた食事、②十分な休養、③適度な運動といわれている。どれも大切なことだが、特に適度な運動は継続することが難しいが、いちど生活の一部として組み込まれるようになると効果は大きいといえる。私は太極拳を19年ほどやっているが、太極拳に出合えたことは私の現在の幸せの一部を占めていると思っている。

そして、「適度な運動」に加えたいのが「ご機嫌な気持ち」だ。「ご機嫌」という言葉は日本抗加齢医学会の前理事長をされていた慶應義塾大学の坪田一男教授が最初に使われた言葉だが、「笑顔」の健康効果と同じで何時も「ご機嫌に」生きることは大きな健康効果をもたらすと考えられている。

健康維持のために毎日『適度な運動』『ご機嫌な気持ち』を!!

利便性とそのリスクとの相関性

1月のコラムで私は「利便性の向上とそれによる代償」について書いた。交通手段の飛躍的な発展によって現代人の私たちの行動範囲が飛躍的に広がった反面、運動不足による生活習慣病の拡大という高価な代償を支払うことになった。

さらに、インターネットの登場でグローバル化が国家、企業、個人の生活にも密接に関わるようになってきた。今では、机に向かうだけで世界中の取引も簡単に行うことができる。最近は、スマートフォンの登場で個人のライフスタイルも大きく変わろうとしている。先日、テレビを見ていたらスマートフォンを操作することでどこにいても、自宅の家電製品をコントロール出来ることを紹介していた。

こうしたインターネットの普及による利便性の向上は確かに生活を豊かにしていることは間違いないと思われるが、一方でリスクも拡大していることを見逃してはならない。すでに、インタネットバンキングではいろいろと問題が報告されている。

そうした意味からも、利便性の追求はそのリスクの拡大と総合的に見ていく必要があるといえるだろう。

ビタミンDの健康効果

ビタミンDは一般的に腸内でのカルシウムの吸収を高めて骨や歯を丈夫にすることは良く知られていることだが、最近の研究ではさらに、心臓疾患、がん、自己免疫疾患、肥満や認知症、インフルエンザなどの予防や免疫力の強化にも効果があるだけでなく、長寿と関係する染色体のテロメアの長さの減少抑制効果があることも分かって来ている。ビタミンDは魚介類やキノコ類に多く含まれているが、日光を浴びることで体内に生成されることが分かっている。

しかしながら、現代人の大半の人はビタミンD不足にあると言われている。この大きな原因として紫外線が有害であることが過大にマスコミなどで取り上げられていることに起因しているようだ。日光の下で肌焼けを起こすほど太陽を浴びるのは勿論有害だが、日光浴を極端に敬遠してしまうのは行き過ぎといえるだろう。

健康維持の基本は運動も日光浴も、何事においても『適度』という事が最も大切なことと言える。

ため息は自己防衛の生体反応

昔からため息は体に良くないという事がいわれているが、最近はむしろ体に良いといわれるようになった。どうして昔の人はため息を体に悪いと考えたのだろうか。

ため息はどんな時に、あるいはどんな人に多く出るのかを考えて見ると良く理解できる。一般的に不安なことや悩み・ストレスなどを多く抱えている人がため息を多くする。不安なことや悩みを多く抱えているとその人の自律神経はどうしても交感神経が高くなり、自律神経の乱れが生じてしまう。こうした乱れが長期間継続すると体調を崩すことになる。

私たちの体はこうした体調の崩れを生じる前に自己防衛的にため息を起こさせて自律神経の乱れを調整することをしていると考えられる。ため息とは大きく息を吐くことである。私たちの自律神経は吸気時に交感神経が高まり、呼気時に副交感神経が高まるようになっている。従って、ため息をつくことで副交感神経が高まり、自律神経をバランスのとれた正常な形に戻す役目を担っているのだ。

ストレスが高まったり、悩みや不安な状態になったりしたときはため息を待たずに、意識的に深い呼吸(吸気の倍ぐらいの長さでゆっくりと吐いていく)をすることが自律神経のバランスを保つのに大変有効と言える。

健康と病気は同じ連続体上にある

アメリカの健康社会学者アーロン・アントノフスキーは「健康と病気は別個のものではなく、私たちは健康と病気の連続体上のどこかに位置している」と述べている。 つまり、すこぶる元気で健康に感じる時は連続体上の健康側に近い位置にあり、朝から体がだるく気分がすぐれない時は連続体上の病気に近い位置にあると言える。東洋医学で「未病」という概念があるが、これは連続体上の病気に近い位置にあるといえるだろう。

そして、病気側に私たちを押し寄せる要因としては深酒、喫煙、肥満、運動不足などの悪い生活習慣であり、健康側に向かわせる要因としてはやはりバランスの摂れた食事であり、十分な睡眠であり、適度な運動であり、そしてご機嫌に前向きに生きるなどの良い生活習慣だろう。

つまり、いつまでも元気で長生きして健康寿命を延ばすためには常に良い生活習慣を維持することが何よりも大切といえる。