常楽さんの健康ブログ

健康について考えるブログです。

老化について

昔、不老長寿の薬を求めて家来に徒労の旅をさせた中国の皇帝がいたが、朗報が彼のもとに届くこともなく死を迎えた、と伝えられている。そして現代でもこの命題は変わりなく、人は誰でも例外なく老いる。では、なぜ人は老いるのか、と言う疑問に対しては現代科学の粋をもってしてもまだ完全には解明されていない。 

そんな中で最近大変興味のある研究が発表された。アフリカのモザンビークジンバブエに雨季の間に出来る水たまりに生息するカダヤシ類の淡水魚がいる。この魚は雨季が始まると孵化して3週間ぐらいで産卵できるまでになり、2-3か月で死を迎えるという超短命の生き物である。世界の科学者たちが注目したのはこの淡水魚を実験室で観測すれは短期間で生命誕生から死までの過程を観察できるということだそうである。そして、2-3か月を迎えると鱗の色が輝きを失い、体のあちこちにがん細胞が見られるようになるそうだ。

現在では長寿遺伝子といわれるサーチュインとか長寿ホルモンといわれるIGF-1などの研究が進められているが、不老長寿を願う気持ちは中国の皇帝だけでなく、人間の尽きない課題かもしれない。

人間の「脳力」の凄さ

 先日、新宿末廣亭で寄席を楽しんできた。沢山の芸人さんが多彩な演芸やお笑いを披露してくれたのであっという間に時間が過ぎたが、私が今回の演芸の中で特に驚いたのは紙切り芸人の技であった。舞台で体を揺らしながら手さばき鮮やかに紙を切っていくのだが、出来上がったものは信じられないほどの細やかさで見事なものであった。

 事前に何回も練習していたとしてもそんなに容易ではない芸と思われるが、今回はお題を会場から頂いたものを即興でやったことが先ず驚きである。さらに紙を切っている間、無言で紙切りに集中しているのではないのだ。紙切りとは関係のない話をして観客を笑わしているのである。さらに、紙を切っている間は体を前後に揺らしながらリズムをとっているのである。

 この技のすごさは3つの全く関係のないことを同時進行で行っているのである。私たちは頻繁に日常生活の中で無意識に2つのことは同時に行っている。例えば、車を運転しながら同席の人と会話をしている。あまりにも当たり前に行っているので意識しないのが普通だが、考えてみれば脳は運転するという行為と同席の人との運転作業とは全く関係のない会話を楽しむという行為を同時に行っているのだ。これだけでも、すごいことを脳は行っていることに驚いてしまうが、紙切り芸人は3つの別々な高度の作業を同時進行で行っていることに舌を巻かざるを得ない。こんなことはどんなに科学技術が発達してもロボットには不可能だろう。

 確信出来ることは、このような芸人の方たちは決して認知症などにはならないだろうと言うことだ。認知症予防には2つのことを同時にやる(ダブルタスク)ことが良いとされている。だからウォーキングしながら計算(例えば100から7の引き算を続ける)することは良く知られているが、今回の紙切り芸人の技は超超高度な計算をやっているのと同じと言えるだろう。

運動とがんの関係

「運動を錠剤にして販売することが出来れば、世界で最も売れる薬になるだろう」と言われるくらい、運動が健康に良いことは広く知られております。適度の運動を定期的に継続することで、肥満などによるメタボ予防、足腰などの運動器のロコモ予防、心肺機能の強化、高血圧予防さらにはストレス解消などの精神的効果など多くの健康効果が期待されております。さらに運動は一部のがん予防にも効果があることが近年の研究から分かっております。現在までの研究では運動することで予防効果があるとされているのは「大腸がん」と「乳がん」です。「大腸がん」も「乳がん」も近年顕著に患者数が増えている「がん」ですが、この2つのがんについてはすでに多くの研究から強いエビデンスがあると言えます。

運動は残念ながら錠剤にして飲むほど簡単ではありませんが、日常生活の中で適度の運動を継続することは自分の人生を意義のあるものに出来る方法の一つではないでしょうか。

健康の維持には自分がコントロールできる事とできない事があることを知ることが大切

自分の健康に関心のない人はいないでしょう。健康を維持するためには自分がコントロールできる事とできない事があることをはっきりと認識することが大切です。

それでは、自分がコントロールできない事とは何でしょうか。まず第1に年齢です。どんなに健康に自信のある人でも確実に体力は衰えて行きます。年齢は努力の如何に関係なく自分では若返ることも先延ばしすることも不可能です。第2は親から受け継いだ遺伝子です。私たちの体には連綿と遠い先祖から受け継がれてきた2万数千個といわれる遺伝子があります。これらの遺伝子の中には特定の病に罹りやすい遺伝子が含まれている可能性があるかもしれません。しかし、これも自分では全くコントロールできません。そして、最後が不慮の事故です。

つぎに、健康維持のために自分がコントロールできる事とは何でしょうか。これは何といっても生活習慣です。バランスの摂れた食事、適度の運動そして睡眠という健康維持の3要素のほかに禁煙・適度の飲酒などに注意を払うなどです。これらはすべて自分でコントロールできる事といえます。

欧州の格言に『遺伝子が弾丸を込め、生活習慣が引き金を引く』というのがあります。例え親から受け継いだ自分の遺伝子の中に病気を発症する可能性のある遺伝子を持っていたとしても(遺伝子が弾丸を込め)、正しい生活習慣を守っておれば発病(生活習慣が引き金を引く)しないと言うことを、この格言は言っているのだと思います。さらに、毎日を前向きにご機嫌な気持ちを持つことも長寿と強い相関関係にあることも近年の論文から明らかになっております。

さあ今日も「ご機嫌に、毎朝スッキリ、適度の運動」で過ごしましょう。

認知症予防に太極拳が良い?②

太極拳では体の力を抜いてゆっくりと手足をバラバラに動かすことが求められます。こうした動きは一見さほど難しいようには見えませんが、いざ自分がやってみると簡単ではない事を実感します。私たちは初めて新しい動作に挑戦する時、「どうしたら上手く手足を動かせば良いのか」と、脳のあらゆる神経細胞を総動員して「その答え」を見出そうとします。しかしながら、太極拳の動きは複雑であり、ある程度の動きをマスターするためには少なくとも1年以上の継続的な練習が必至なのです。そのため初心者の方にとっては練習をしている間は脳をフル回転させなければならないので、練習終了後には大変な疲労感を感じるでしょう。

一般的に、認知症予防には「運動をしながら、同時に頭を使うという二つの課題(ダブルタスク)」をする事が有効的であると言われています。運動して血流が増えた状態で脳を使うことにより脳の神経細胞の活性化を促すものと考えられるからです。

太極拳はゆっくりとした深い呼吸を伴った有酸素運動です。酸素を十分取り入れた血流が脳内に増えた状態で「どうして上手く手足を動かせば良いのか」と脳神経細胞をフル回転させるため、まさに太極拳を行うことは「運動しながら、頭を使うというダブルタスク」をしていることになります。近年、太極拳認知症予防に関する論文が多く見られるようになったのは、その証しでしょう。

認知症予防に太極拳が良い?

最近はいろいろなメディアを通じて太極拳の健康効果が伝えられるようになってきた。太極拳の健康効果についての研究を行っている者としては喜ばしい限りである。そこで、今回は太極拳の健康効果について簡単に述べてみたいと思います。

武術として中国で始まった太極拳は深い呼吸を伴った独特のゆっくりとした動きが特徴です。太極拳はこの独特のゆっくりとした動きにより、精神的効果と身体的効果が同時に期待できるとされております。代表的な身体的効果としては転倒予防効果があります。それでは、なぜ太極拳を継続的に行うことで転倒予防に繋がるのでしょうか。その理由は、あの独特のゆっくりとした動きにあります。ゆっくりした動きのため、片足で立つ時間が長くなります。片足立ちは当然ながら不安定な姿勢です。私たちの体には視覚、体性感覚、前庭という3つの器官があり体のバランス調整を行っています。したがって、不安定な姿勢になった場合には不安定な姿勢を修正しようとして足の裏からの刺激を脳へ伝え、視覚からの情報とともに脳から神経・筋肉・関節等を通じて指令を出して転倒しないように一斉にバランス修正行っています。太極拳を長期間継続的に行うことにより、こうしたバランス修正を繰り返し行うことで、バランス能力が高まると言われております。

女性は高齢になるに従い、女性ホルモンの分泌が低下するため骨が弱くなってしまいます。従って、高齢の女性が転倒すると骨折をする確率が非常に高まり、特に大腿骨近位部を骨折してしまうと寝たきりになってしまったり、介護が必要になってしまったりして生活の質(QOL)落ちてしまうため、転倒予防は大変大切です。太極拳は高齢になっても無理なく継続することが可能であり、転倒予防に最も効果的な運動であることから、高齢者にやさしい運動と言えます。

さらに、最近の論文では太極拳による認知症予防効果複数報告されるようになり、注目を集めています。世界的な高齢社会を迎えつつある中で、さらに多くの太極拳認知症予防効果に関する論文が発表されるであろうと思われるので見逃せません。

“こころ”が若い人は長寿?

ロンドン大学の研究グループによると、52歳以上の男女6,500人を対象に行った調査で、実年齢より3歳以上若いと感じている人は実年齢と同じ、あるいはそれ以上と感じている人と比べて死亡率が低い事が分かった報告している。自分が感じている年齢と癌との間に相関は見られないが、心臓病との間には強い相関関係があるという。ハーバード大学の心理学准教授であるシーゲル博士によると、実年齢より若く感じるか否かは、私たちの健康に強い影響を与えているという。

シーゲル博士は自分を若く感じる方法として推薦しているのが、先ず週150分間の中程度の運動である。精神的に若いと感じると、運動の継続にもつながり、それが健康維持に影響を与える様だ。次に大切なのが食事である。糖分やトランス脂肪酸飽和脂肪酸などを控えて、食物繊維不飽和脂肪酸、オメガ3脂肪酸などを多く摂取することが健康維持に大切という。その他、①新しいことへのチャレンジ、②「今、現在」へ意識を向ける、③趣味などの楽しみの中で社会との関わりを見出すことが重要としている。 

やはり、いつまでも元気で健康に過ごすためには、何時も前向きで明るく、ごきげんで活動的で、そして新しいことに興味を持って生きることかもしれない。